明珍火箸風鈴が使われている作品まとめ

(画像は髙島屋オンラインストアより)
明珍火箸風鈴の音色は様々な人を魅了し、一流の工芸品や映画、音楽作品などでも用いられております。ここではどんなものに明珍火箸風鈴や、明珍火箸の技術が使われているのかをまとめてみたいと思います。

セイコー クレドール ノード スプリングドライブ ミニッツリピーター

日本トップの時計メーカーであるセイコーが、技術の粋を結集して製作している最高級ブランド「クレドール」。その中でも最も難易度の高い技術をつぎ込んで製作した時計が「ノード スプリングドライブ ミニッツリピーター」です。

ミニッツリピーターは機械式時計の三大複雑機構と呼ばれているものの1つで、時計のレバーを操作すると現在時刻を鐘の音で知らせる仕組みで、特に高い技術を持った一部の高級時計メーカーでしか実現させることができないものです。

そのミニッツリピーター機構の肝である鐘の部分に、鍛冶師である明珍家第52代目当主、明珍宗理(みょうちんむねみち)氏が、先祖代々伝わる技法で鍛えた鉄材を使用しています。

それでは、ミニッツリピーター時計に搭載された鐘の音を聴いてみましょう。


ちなみにこの時計のお値段は3300万円+税です。ちょっとおいそれと買える値段ではありませんが、一度は生で聴いてみたい音ですね。私は明珍火箸の存在は、このクレドールの時計で知りました。

詳しく知りたい方は、下記の参考ページをご覧になるとよいかと思います。

参考ページ:
<クレドール>から、セイコー創業130周年記念コンプリケーションウオッチ<クレドール>ノード スプリングドライブ ミニッツリピーターを発売


NHKスペシャル『街道をゆく』のテーマ音楽

作曲家であり、シンセサイザー奏者の冨田勲(とみたいさお)氏も明珍火箸風鈴の音色に魅せられた人の一人。スティービー・ワンダーに明珍火箸風鈴の音色の良さを伝えて、そのファンにしたのも冨田氏です。

兵庫県姫路の駅で偶然、地元名産の明珍火箸風鈴に出会った冨田勲氏は、おみやげにしては高いなと思いながらもなんとなく買い、家に帰って鳴らしたら、あまりの良い音にやみつきになってしまったとのこと。

当初、明珍火箸風鈴の音を楽曲に取り入れようと思ったものの、アナログ録音では音の良さを再現することができなかったため諦めていたが、デジタル録音が可能になったことで、再度楽曲に取り入れようとして出来上がった曲が1997年(平成9年)に出来たこのNHKスペシャル『街道をゆく』のテーマ音楽。

それでは、冨田勲氏が魅せられた明珍火箸風鈴の音色を最大限に活かした『街道をゆく』のテーマを聴いてみましょう。


TOMITA ON NHK〜冨田勲 NHKテーマ音楽集
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源氏物語幻想交響絵巻

冨田勲氏は他にも、自身が音楽を担当した映画「武士の一分」や「たそがれ清兵衛」、「隠し剣 鬼の爪」などでも効果音として明珍火箸風鈴の音が使われています。そして、冨田勲氏のアルバム「源氏物語幻想交響絵巻」でも多くの楽曲で玉鋼火箸の音が使われています。

玉鋼火箸(たまはがねひばし)というのは、刀を作るのに使う特別な製法で作られる希少な鉄、玉鋼を用いて明珍氏が作った火箸です。それでは、「源氏物語幻想交響絵巻」の中でも特に評価の高い「桜の季節 ~ 王宮の日々 (源氏の誕生)」を聴いてみましょう。


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志賀直哉の「暗夜行路」

「暗夜行路」が書かれた時代には明珍火箸風鈴はありませんでしたが、火鉢、囲炉裏で使う生活用品として一家に一膳火箸が置かれていた時代であり、火箸としての明珍火箸が登場します。当時から明珍火箸は姫路の名産品でした。

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ソニーのマイクロフォンのテスト音源

(画像はtomoki-m氏のHPより)
ソニーのマイクのテスト音源にも明珍火箸風鈴は使われています。人の声や太鼓などは、コンディションや湿気で音が変わってしまうが、明珍火箸風鈴の音色は、少々の環境変化では変わらないため、テスト音源に適しているとのこと。

テスト音源としての明珍火箸は、1958年に発売された国産初のコンデンサーマイクロフォンであるC-37Aから現在のC-800型まで、50年以上も使用され続けています。ソニーの明珍火箸を使った広告画像がネット上に残っていましたのでそれを書き起こします。

ちなみに下記の「前畑ガンバレ」というのは、1936年(昭和11年)に開催されたベルリンオリンピックで、デッドヒートの末、2位と1秒差で金メダルを獲得した、200m平泳ぎの前畑秀子選手のことで、当時ラジオ実況をした河西アナウンサーが20回以上も絶叫をした当時の流行語のことです。

火箸が変えた世界の音色。
 昭和は私達の耳にいろいろな「声」を残しました。「前畑ガンバレ」「玉音放送」「東京五輪開会式」「ゴジラの咆哮」「ビートルズ来日」…実はその「声」が東京五輪を境に大きく変化しているのです。<聖火台に火が点りました。燃える。燃える。燃える。>あの名セリフが昭和39年。この時代以降、放送用国産コンデンサーマイクが普及します。先鞭をつけたのがソニーのC-37A。昭和29年にデビュー。外国製品一辺倒だったマイクの世界に革命をもたらしました。世界のミュージシャンにC-37Aファンが続出したのです。そして、世界で初めてトランジスタ化が図られたC-38。放送のやり方を変えたタイピン型・超小型エレクトレットコンデンサーマイクECM-50と、世界に先駆ける最先端マイクの出現で、「マイクはソニー」という時代が到来します。
 さて、そのソニーの技術陣が音質検査に使うのは、2本の火箸。それも由緒正しい明珍火箸です。これを糸でつないで鳴らすと心地よい音がします。音色と余韻が優れている生音調。マイク革命をもたらしたソニー技術陣の採用理由でした。技術と火箸のアンサンブル--世界の音を変えたのは、日本古来の火箸ということになるでしょうか。


その他

その他、明珍火箸風鈴が使われているものをここに挙げておきます。

2002年 FIFAワールドカップの決勝戦前夜祭で玉鋼火箸の音色が披露される
2002年 山田洋次監督「たぞがれ清兵衛」(音楽:冨田勲)で効果音に火箸使用
2004年 山田洋次監督「隠し剣 鬼の爪」(音楽:冨田勲)で効果音に火箸使用
2005年 愛知万博のプレイベントで服部克久氏が玉鋼火箸を使用
2006年 山田洋次監督「武士の一分」(音楽:冨田勲)で効果音に火箸使用
2008年 パリコレ「イッセイ・ミヤケ」のショーで火箸風鈴を使用

参考ページ:
クレドール SPRING DRIVE Cal.7R11 ミニッツリピーター GBLS998 明珍 宗理 略歴